山口達也。せめて人身事故を起こす前につかまったことが幸運だったと思いたい。同じ病を持つアルコール依存症の私としては。

山口達也、酒気帯び運転で逮捕されましたね。
私もアルコール依存症なので、他人事ではありません。

アルコールをやめるのは難しいですよ。
テレビやネットのCMで「うまい、うまい!」とタレントが連呼し、
電車に乗れば、中吊り広告やドア窓に宣伝のステッカーが貼ってある。
きわめつけはコンビニの冷蔵庫の中のキンキンに冷えたビール。
商品棚には隙間なく詰められたウィスキー、ワイン、焼酎のボトル。
毎日必ず行く場所だけにイヤでも眼に入って来ます。
アルコールという名の合法薬物が私たちの日常風景に濃密に溶け込んでいます。

酒造メーカーも小売店もマスコミも広告代理店も、あの手この手を使って、一滴でも多く呑ませ、1円でも多く利益をあげようとしています。
アルコール依存症の者たちは、それらの誘惑から逃れることはできません。
映像が、ゴクゴクと喉の鳴る音が、うまいうまいと連呼する声がイヤでも襲いかかってきます。

こうした消費社会にいる限り、アルコールをやめ続けるのは至難のワザです。
覚醒剤やマリファナは社会の陰に隠れていますが、アルコールは合法なのをいいことに大手を振って宣伝され、街のいたるところで売られています。
一度、アルコール依存を発症した人は、その先ずっとこれらの誘惑に耐えていかなければなりません。

だからアルコールの誘惑に負けた山口達也のことを誰も責められません。
覚醒剤やマリファナで何度も捕まっている人とは一線を画していいのです。
なぜならアルコールは「法」で禁じられてはいないから。
(本当は同じ依存症なのにね)。

しかし、と誰もが言うでしょう。酒気帯び運転は許されない。
私もそのことが残念です。自分がアルコール依存症であることを自覚していたのであれば、なぜバイクを手放さなかったのか。

今は、酔って自転車に乗っていても職質にあえば面倒なことになります。
他人にぶつけたりしたら、大事です。
そんなことは、わかっていたんだろうになぁと思います。

もしかしたら自分が有名人で顔が知られているから、酔って電車やタクシーに乗ったらばれてしまう。世間的には断酒したことにしてあるから。
だからヘルメットで顔を隠せるバイクを手放せなかったのかもしれない。

もしそうなふうに考えていたのなら、なまじっか有名人になってしまった彼に憐憫の情さえ沸いてきます。
せめて人身事故を起こす前につかまったことが、彼の幸運だったと思いたい。
他人にぶつけて、ケガを負わせずにすんだことは人生最大の幸運だよ、山口達也。

そして、なんとかここまで生きてこられた私自身も、幸運だと思いたい。


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