アル中とアルコール依存症はどう違う?そもそもアルコール依存症は病気なのか?

アルコール依存症は病気です。
私自身、ちょっと前まで自分が病気だとは思っていませんでした。つまりアル中だ、と。
たとえばアルコールを呑んで、だらしなくなるから。昼間からダラダラ呑んで暴れるから。暴言や毒を吐くから。そこらじゅうにゲロを吐くから。自分の都合のいいように記憶をなくすから。
だからアル中だ、と。自分では思っていたんです。

アル中とは何か?
でも、そうではなかったんですね。アル中とはどのように定義されているのかを調べてみました。

厳密にいうと「中毒」とは急性中毒のこと。たとえば「一酸化炭素中毒」と同じで、アルコール中毒というのは、急性の、大学生が一気呑みしてぶっ倒れたときのような症状を指すんです。
(『アルコール白書』西原恵理子 吾妻ひでお著 月乃光司協力)

昔、とんねるずが『一気』を歌っていた頃はこうしたトラブルというか事件が多発してマスコミを騒がせましたね。

いっぽうアルコール依存症は何かというと、今の私ならこう答えます。「頭の中がアルコールでいっぱいの人」だと。

働いている間も仕事を終えたら酒を呑むことを考え、終わると同時に呑み始める人。コンビニで買ってその脇で呑んでる人。休みの日は朝から呑んで、昼も呑み続けて、夜倒れるまで呑む人。要するに脳のなか全部をアルコールが占拠していて、有り全部を注ぎ込んでしまう人。
さらに言うと、奥さんのへそくりを部屋中ひっくり返して探し出し、子供の進学貯金をむしり取ってアルコールにかえてしまう人。呑んで運転して他人をひきころす人もいます。
皆さんは、こうした人を正常だと思えますか。

でもこれ全部、アルコールがやらせているんです。
アルコールという合法薬物の薬理効果のために、自分の意志で自分の行動をコントロールができなくなっているんです。
睡眠薬を飲んだら眠くなりますよね。クスリが脳に作用したからです。アルコールも脳に働きかけるクスリ、という点では同じです。

では飲まなければいい
正論です。しかしいくら親や上司や友人が諭しても、アルコール依存症になってしまった人はやめないでしょう。

アルコールは脳や肝臓、すい臓や胃腸といった臓器を壊します。が、心(精神)も壊します。だから内科や外科でなく、まず精神科に行って心の治療を受けたほうがいいのです。
そうやって自分の意志と行動をコントロールできるようにするのが先決です。アルコールをやめる。あるいはコントロールできるようにするのは、その後からのほうが効果的です。

私はそうした知識を持たなかったために、この異常な病気を抱え込んだまま長い時間を過ごしてしまいました。
社会的にもアル中とアルコール依存症の違いが曖昧になっているのが現状ではないでしょうか。

しかし私は、吾妻ひでおのマンガ『アル中病棟(失踪日記2)』
によって本当のことを知ることができました。
それ以前にも何冊かアルコール依存症に関する本を読みましたが、医者が書いたものばかりで、患者の観察記録のようなもの(失礼しましたぁ)。いっぽうこのマンガは依存症に陥った著者が治療病院に入院し、退院するまでを描いたものです。
治療される側からの声は新鮮で血肉の通ったものでした。
読後、初めて私は理解できたのです。吾妻ひでおが病気なら、自分も病気なのだ、と。

アルコール依存症は病気なんですよ。


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