ガツガツ、ゴツゴツと音の鳴る靴で歩く女性たちに、一言申したい。

朝7時の電車で都心に向かう私だけど、駅に近づくにつれて耳をおおいたくなる。

ガツガツ、ゴツゴツ、脅迫的な音を響かせ、焦りに焦って四方八方から駅に集まってくる女性の群れに遭遇するからだ。

あれらの音は、何のためなのか。彼女らにとって何の利益があるのか。私には分からない。
音の鳴る靴。ハイヒールの音。

震える指でヘッドフォンのコードをほどこうとするが、こういう時にかぎってもつれてほどけない。
その間にも無防備な耳に侵入して来る無骨で無神経な音。

小走りで満員の急行に駆け込み、険しい表情を浮かべる彼女たちを虚ろな表情で見送りながら、30分早起きすればいいじゃないか、そう小声で私は吐き捨てる。

女性にとって、あのコツコツ鳴る靴にどんな価値があるのか私は知らない。女性の靴にまったく興味がない。鳴る靴と鳴らない靴の区別があるのみだ。

幼女がキュッキュッと鳴らしてはしゃぐのは可愛い。まったく気にならない。ほほ笑みさえ浮かんじゃう。

だが大人の女性が騒音を立てて移動するのは苦痛だ。

うろ覚えで申し訳ないが、以前、Tさんという女性が弁護士の役で主演していたドラマがあった。気の強い主人公は何かしらに腹を立てては、オフィスの廊下をガンガン響かせ、のし歩いていた。

テレビドラマだから何とか我慢できたけれど、もし自分があのオフィスにいて、彼女の部下かなんかだったら、頭痛に苦しんだあげくノイローゼで入院したんじゃなかろうか。
あの手の靴をガンガン、ゴツゴツいわせながら動き回っている女性は気が荒いんだろうと推察せずにいられない。私にとっては一番近づきたくないタイプだ。

私は大学入学試験や資格試験の監督をすることがある。事前に送られてくるマニュアルには、どんな試験であっても必ずこの一行が付されている。
音の鳴らない靴で来ること。

『プラダを着た悪魔』という映画がある。
その中で主人公の女性アンディは同僚の女性たちについてこう話す。
同僚とはファッション業界で働くオシャレな人たちのことだ。
They call them“clackers”.The sound that their stilettos make in the marble lobby.It’s like“clack,clack,clack,clack,clack”.
(あの娘たちはクラッカー(コツコツ女)なのよ。短剣(stilettos)のような尖ったカカトを大理石のロビーに打ちつけて歩くからね。クラック、クラック、クラック、クラック、クラックって響かせて。)
かなり悪意を持って訳してみました。スミマセン。

英語ではカチカチとかコツコツという音を立てる時、clackという動詞をつかう。とプラダを着た悪魔 再改訂版 (スクリーンプレイ・シリーズ)P65にあるが…
私としてはcrackの方が適切ではないかと思う。
crackだと、物が何かに当たって鋭い音を出す。急激な音を立てて砕ける、裂ける、割れる、という意味なのでさらに過激になる。
皆さんも知ってるパーティー用のクラッカー(cracker)もこっちだ。

アンディが同僚の立てるハイヒールの音を激しく攻撃しているのは、クラックと5回も続けて言っていることからも分かる。
本当はどっちが正しいのかなぁとワクワクしながら映画プラダを着た悪魔 [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray])を観るのも楽しい。
しかし、LとRを聞き分けるのはチョー難しい。しかもクラックを連続して言う時、半分おどけで投げやりになっているので、クワックワッと聞こえる。

と、craker女性に怒りまくっている私だけど、映画ブーベの恋人 [DVD]を観て、若い女性が抱くハイヒールへの憧れを垣間見た。それは彼女たちが持つ大人の女への憧れであって、男の私には計り知れないことなのだ。

映画美しき諍い女 無修正版 [DVD]では、ハイヒールを履いて優雅に歩く女性を観た。
主人公の女性は、路上を速足で歩く時はハイヒールを脱ぎ、室内に入ると履く。
そして穏やかにゆっくりと歩く。そのオフとオンの見事さ。

親愛なるOLの皆さんに申し上げたい。朝、忙しい時間に会社へ急ぐ気持ちは分かる。しかし大変申し訳ありませんが、なにとぞ、そこんとこ、よろしくお願いしたいのです。

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