「stay at home」からatが消えてステイ・ホームになった。

去年の今頃、記者会見で小池都知事は「不要不急」の外出を控えるようにと訴えた。

さらに続けて、今の世界のキーワードは「stay at home」つまり、おウチにいなさいということですね。

と、自慢の英単語力も披露した。

それを聞いて私は違和感を覚えた。小池都知事の要請内容ではなく、「stay at home」という英語にだ。

ウチにいるのだから、stay in homeではないのか?

In homeであれば、家の中でヌクヌクと守られている感じがある。

だがatだと、それがない。天井もない、壁もない、むき出しの場所で、ただ立っている感じ。

これでは暑さからも寒さからも、ウィールスからも我が身を守ることはできない。

たぶん私だけでなく、他の日本人も同じように感じたのではないだろうか。

いつのまにか、atは消滅し、この日本ではステイ・ホームが使われるようになった。

そして今年の4月、3回目の緊急事態宣言で、小池都知事はステイ・ホームと言った。

去年、世界中のキーワードであった「stay at home」は、ステイ・ホームになった。

atは言いにくいし、意味不明な余計者だったのだ。

よっ、352万とんで5番目の和製英語の誕生だぁ。

ここからは私の推察だが、英語の脳の中にはつねに地図がインプットされていて、場所をイメージすると、その地図がさっと現れるのではないか。

例えば、I changed trains at Shinjuku Station. (私は新宿駅で電車を乗り換えた。)

と言う時、英語の脳の中では、電車の路線図をはっきり意識している。

新宿駅だけでなく、四ツ谷駅、神田駅、東京駅も点(ポイント)として立ち上がっているのだろう。

また、英語ではこういう言い方もする。

John’s having a party at his house this Saturday.(ジョンは今週の土曜日、彼の家でパーティを開く予定です)。

この場合も英語の脳の中には地図があり、ジョンの家が点(ポイント)としてイメージされているのだろう。最寄り駅も、曲がり角のコンビニも点(ポイント)だ。

目印になる画鋲が地図の上に刺さっているのかもしれない。

鳥瞰して場所をとらえ、線で結んでいるのが英語の脳なのではないだろうか。

でも私の脳では、過去に行ったことがあろうが、なかろうが、ジョンの部屋の中(in)にいる自分がイメージされる。ジョンもいて、招待客もいて、パーティを楽しんでいる。

彼の家に向かう時に必要な路線図や周辺地図を探すのは、その後の話だ。

「stay at home」と聞いて抱いた違和感は、こんなふうに英語と日本語の違いを気づかせてくれた。

私は日本人代表として、こんなふうに考えたのだが、他の人がどうかは分からない。

むしろスマホ世代のマップ使用者は、どこに行くにも、何を探すにもマップに頼っていようだから、私が思う英語の脳の人に近いのかもしれない。「stay at home」が自然な日本人もいるのだろう。

*atとinの考え方はNHKラジオラジオ英会話 2019年 04 月号 [雑誌](P20)を参考にさせていただき、英語の例文も使用させていただきました。お礼を申し上げます。

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